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第383話
また人混みに紛れ分かれると、三条は町のケーキ屋のテントへと向かった。
探す頭はすぐに見付かる。
「優登っ」
「あ、来た。
ごめん持って。
ちょっと熱い…」
「ありがとうな。
2つも持たせてごめんな」
真っ白な湯気のたつ紙コップを受け取ると、冷えた手には熱かった。
これを両手、更にはシュークリームの入った袋まで持っていたのだから溢さないようにと気を遣っただろう。
「シュークリームも寄越しな。
俺が持つよ」
「これくらい良いよ。
子供じゃねぇって」
「じゃあ、これやる」
真っ白い紙袋を弟に手渡した。
袋を手首に引っ掛けすぐに中を確認した優登はマスクをしていても分かる嬉しそうな顔をした。
「お守りじゃん!
ありがとう。
受験の?
良いのっ!」
「良いよ。
優登の為に買ったんだし。
受験受かったら返しに来ような」
「うんっ!」
これは、受かるだろ!と言いながら神社を後にする。
これから帰宅しシュークリームとあったかいお茶を飲んでから、こっそりと家を出る。
早く目をみて新年を挨拶を伝えたい。
『一旦、家に戻ります。
すぐに出てきますけど、あったかいところにいてください』
『コンビニか車にいると思うから、安心しろ。
ゆっくりあったまってから来いよ』
『早く会いたいので、早く行きたいです』
『可愛いことばっかり言って。
なら、あったかい格好で来いよ。
待ってる』
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