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第384話
メッセージを飛ばすと長岡は顔を上げ、此方に気が付いた。
それから車のドアを開け乗り込む。
「あけましておめでとう」
「おめでとうございます。
お待たせしました」
「雑誌買って読んでたから平気だよ。
久し振りに少年誌買ったよ。
知らねぇ漫画ばっかりと思ったら、案外名前は知ってて面白いな」
三条が気負わない言葉選びに長岡の性格が滲み出る。
時刻は既に天辺を大きく過ぎているが、今日は元日。
夜更かしをしても言い訳のある日だ。
それを良いことに、秘密の逢い引き。
「あ、正宗さんもシュークリームどうぞ」
「良いのか?
ありがとな」
「お祝いですから、みんなで食べたいんです」
「そこに、俺も入れてくれんの嬉しいよ」
三条にとっては当然のこと。
だけど、お祝いをする“みんな”に自身が含まれていることが嬉しいと長岡は喜ぶ。
そんなの、“家族”なのだから当たり前なのに。
血液や紙の上のナニかだけが大切ではない。
大切なのは、もう知っている。
「そういえば、弟でっかくなったな。
前に会った時はこんなだったろ」
高校在学中の文化祭で会っているのか。
食券を分けてくれたお陰で、優登も一樹も楽しく過ごせた。
そして、目指す学校への憧れを1層強くした出来事。
「もう高校受験ですよ。
同じ学校行くって毎日頑張ってます」
「早ぇな」
「正宗さんに出会ったのが、もう6年前なんですね」
「もう遥登の6年もらってんのか。
嬉しいな」
「もっと貰ってください」
「ん。
貰う。
交換したもんな」
「はいっ」
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