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第409話
「いたっきまーす!」
「いただきます」
家族揃っての食事の時間。
大学生にもなって、と思うかもしれないが、案外嫌いではない。
ナポリタンを前にして、末の弟はパチンっと手を合わせる。
すぐにフォークを握るとぷすっとたこさんウインナーに刺した。
「たこさん!」
上手に刺せると、父と母に見せびらかし、今度は優登にも見せている。
「くれんの?」
「だめぇ。
あーとの」
これだからだ。
賑やかで、この家らしい。
それが良い。
「おいし!」
「あー、食った」
「優登も欲しいならあるよ。
ほら、食いな」
皿に盛られた沢山のたこさんウインナーを、ススッと弟の皿に近付けると眉を下げて笑った。
いつまでも子供扱いをするな、だけど嬉しいとびかりに。
「ありがとう」
「あーとも!」
「綾登のお皿に、たこさんもう1人いるよ?」
「ゆーと、ぜんぶないないしない?」
「しないよ。
だから、ゆっくり食べようね」
ドレッシングをシャカシャカと振りながら、眺める食卓のあたたかさが好きだから。
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