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第413話

じゃあ、遠回りしようぜと少しだけ遠いパン屋へと向かう。 長岡への部屋へと向かう道から逸れ、住宅街の外れ。 そこでパンを買い、また少し移動して公園の駐車場で早い昼飯にする。 「遥登、大きく齧り付いてみ」 「え、熱い…とかですか?」 「そんなんじゃねぇよ。 美味いから。 ほら、ガブッといけ」 食べさせてもらうのは恥ずかしいが、大きく口を開けてカレーパンに齧り付く。 すると、やわらかなナニかがプリッと弾けた。 「んーっ!」 たまごだ。 それも半熟の。 三条の目がキラキラと輝く。 「美味いか」 頬袋をパンパンにした三条は返事が出来ないかわりに、大きく頷いた。 それを見て長岡は嬉しそうな顔をする。 「遥登好きそうだなって思って買ってみたけど、口に合って良かったよ。 ほんと、カレーとたまご好きだな」 「美味しいです! たまごがプリって!」 「ははっ、すげぇ食い付いた。 ほら、持って食いな」 「ありがとうございます」 受け取る際に指先が触れ合った。 すると、その指ごと握られる。 「正宗さん…?」 「やっぱりこれは食わせる。 ほら、あーん」 「俺の手は、ひつようですか…?」 「必要、必要」 恥ずかしさや照れはある。 けれど、それを上回る幸福感。 それに2人で笑いながら昼飯を食べる。 そんな時間がとてもしあわせだ。

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