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第440話
美味いと分かる顔でチョコレートを口の中で転がす三条。
この顔見たさに食わせてしまう自覚はある。
いや、だって、この顔だぞ。
しあわせそうに頬袋を膨らませて食べている。
膨らんでいる頬に触れながら耳へと手を滑らせ、そっと顔を近付ける。
「あの食い方思い出してく食えよ」
吹き込まれる言葉に、三条の顔がみるみる赤くなりクリッとした目は真ん丸だ。
「好きだろ。
“あの食い方”」
至近距離で見詰め合う。
深く綺麗な色をした目は自分を見詰めたまま、じわっと熟れる。
この照れ方のなんとも可愛いこと。
スイッチの入ったセックスの最中はあんなに淫らで大胆なのに、普段の初さはまるで処女のよう。
単純だがそのギャップがたまらない。
耳から更に手を伸ばし、後頭部を掴むと抱き寄せた。
「どんな味がすんだっけ」
三条は肩口に顔を埋め、背中へと手を回した。
「……えっちぃ、あじ…」
「美味い?」
「…………とても」
「とてもか。
かわい」
声でからかわれていると解った三条。
それでもそれに乗ってくれるのだから、長岡より大人だ。
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