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第445話
最後に確認だけ…と思い既に数時間が立っている。
はじめての受験に、なんだかケツがモゾモゾしてしまう。
やることはやってきた。
もうなるようにしかならないような気もするが、足掻きたい。
あの日見た楽しそうな光景が目から離れないから。
憧れたから。
また我慢の多い学校生活だとしても、それでも手を伸ばした。
「優登、起きてる?」
「うん。
起きてる」
「入っても良い?
あ、待って、開けて」
「どうしたんだよ」
ドアを開けると兄がいつもの顔で立っている。
その両手にはお盆。
「夜食持ってきた」
掲げてみせるそれの上には、カレー。
それとたこやき。
「夜食って、もっと消化に良いやつなんじゃねぇの?」
「好きだろ?」
「大好き」
「好きなもん食って、腹も心も満ち足りた方が良いだろ。
優登が食わなきゃ俺が食うだけだし」
部屋へと招き入れ、お盆を受け取ってから気が付いた。
これは兄の作ったカレーではない。
「兄ちゃんが作ったのじゃない」
「うん?
母さんだよ。
明日の朝ご飯に作ってたからもらってきた。
味見な」
どうやら食事の後片付けを終えてから作ってくれたらしい。
素直になれなくても傍にいてくれる両親。
「たこやきは俺と綾登から。
今日のお迎えの帰りに…、お迎えの帰り?
まぁ、良いか。
その時にコンビニで買ったんだよ。
たこぉで多幸な」
「なんだよそれ」
験担ぎも縁起物も嬉しい。
この気持ちを返したい。
結果で。
食べたらもう少しだけ頑張ろう。
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