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第446話

「おはよ」 「おはよう。 眠れたか?」 「爆睡だった」 「ははっ、そりゃ最善だ」 部屋のドアを開けるとちょうど同じく部屋から出てきた兄と出くわした。 「あ、今日はよろしくお願いします」 「うむ。 善きに計らえ」 いつものふざけた会話。 それが肩から力を抜いてくれる。 そんな今日は高校の一般試験日。 送りも帰りも兄が車を運転してくれるらしい。 電車で行くから大丈夫と言ったのだが、たまには母校を見たいと言った。 半年前には実習で1ヶ月も通っていたのに。 乗りなれない電車より気を使わなくて良いように、そして感染症対策も兼ねて言ってくれているんだ。 すぐに体調不良を起こし試験が受けられないということこそないが、1週間後の結果発表は自分の目で見ることが出来なくなる。 それを危惧してくれている。 兄自身が経験を奪われたから。 兄ばかり、と口にしようとしたがやめた。 だって、兄はそれを喜ばない。 するなら喜んでもらえることが良いだろ。 揃って階下へと向かうと母親が兄によく似た顔で笑っていた。 「おはよう。 朝ご飯はカレーだよ」 「はよ。 知ってるよ。 昨日兄ちゃんがくれた」 「じゃあ、キチンカツがのっかってるのは?」 「えっ、マジ!!」 「顔洗っておいで。 用意しておくから」 バタバタとした足音に寝室から綾登が顔を出した。

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