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第448話

自宅に戻らず、そのまま大学の方へと向かう。 正確には、その先の恋人の部屋が目的地だ。 高校教諭の恋人との会話の最中、自然と今日の話になった。 その際、送迎をすると何気なしに言ったら、部屋を使っても良いぞと言われた。 自宅に戻るのとほぼ同じ距離。 昼寝をしていても良い。 本も読み放題。 Wi-Fiも。 そんな言葉に甘えさせてもらうことにしたのだが、どうせなら役に立ちたい。 エコバックにいっぱい買い物を済ませ長岡の部屋へとやって来た。 今日の晩ご飯と軽く掃除をさせてもらう。 それでも十分に時間は余る。 それこそ本当に昼寝も出来るだけの時間が。 けれど、弟が試験を受けていると思うとなんだかソワソワしてしまう。 そんな思いを振り払うように三条は慣れた手付きで食事の準備を整えていった。 ひじきの煮物やきんぴらを拵え、肉に調味した味噌を塗ったくり冷凍保存をしたり。 異動したばかりなので来年度他の学校に異動はないが、新入生を迎え入れる準備や春休みの課題をつくったり忙しくなる。 少しでも部屋でゆっくりしてもらえるように手伝えることがあればしたい。 いつも甘やかしてもらっているので、それくらいはさせて欲しい。 長岡が食べたいと言っていた春雨サラダを混ぜながらチラチラと時計を確認してしまう。 やっぱり頭から完全に振り払えない。 落ち着かなくなってきた。 こらばかりはブラコンと言われても仕方がない。

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