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第452話

「ゆーとっ」 クルマのドアが開く前から「ゆーとっ!」と声が聞こえていたが、開いたら開いたで抱き上げろ!早く乗せろ!とばかりに手を広げた。 兄が笑いながら乗せると鞄も下ろさず、帽子も外さず、なにかを差し出してきた。 「こえ! あのねっ、あのっ、なぁに?」 「受験お疲れ様」 「じゅけ、おちかれ!」 小さな手には折り紙のメダル。 真ん中にはだいすきと先生が書いてくれたらしい。 シールの装飾は綾登本人が貼り付けたのか、豪快だ。 だけど、とても格好良い。 それを押し付けると背伸びをした。 「よしよーし」 そして、頭を撫でてくる。 父と母、そして兄にそっくりだ。 そうしてもらっているから、同じ遺伝子をもっているから。 違う。 家族だから。 小さくても立派な家族の一員だからだ。 だから、優しいところがそっくりなんだ。 「ありがとな。 すっげぇ嬉しい」 「うれし? あーとも!」 「ほら、からあげ食うか」 「かららげ! しゅき!」 「出発したいからチャイルドシートに乗ってくんねぇかな…」 「あーいっ」 「ほら、シートベルトしめるぞ」 抱き上げ、シートに座らせるとにぃっと笑う。 明日から自分だけ保育園でグズりそうだが、まぁ、それも賑やかで良い。 「兄ちゃん出来た」 「ありがとう。 じゃ、帰ろうな」

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