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第455話

着いてきて、と言われ、弟の後ろを歩く。 見慣れた母校。 だけど、まったく違って見える学校。 今日は高校入学試験の合格発表日だ。 付き添いの父兄や、友達同士の間を兄弟で縫い歩く。 喜びを分かち合ったり、悔しさに涙を流したり。 人生の貴重なそれを当事者ではなく外部の人間として目の当たりにすると、なんともいえない気持ちになる。 緊張。 それが正しいのかは分からない。 こんな気持ちははじめてだ。 弟はどちらになるのだろうか。 前を歩く頭は、ただ真っ直ぐに前を見ていた。 玄関扉の硝子に張り出される真っ白な紙。 その上の数字の羅列へと目を滑らせた弟はポツリと言葉を吐き出した。 「あ、あった」 なんでもないことのように。 だけど、喉を震わせて、そう言いながら振り向いた。 「いや、見間違いかも。 兄ちゃん確認して」 受け取った小さな紙に記されている数字はすぐに見付かる。 あぁ…、良かった… 「あるよ。 おめでとう」 頑張ったことが花を咲かせた。 芽出いことだ。 「あった…」 「うん。 あった。 合格だよ」 「ありがとう。 良かった…。 これで兄ちゃんの制服着れるなっ」 「俺のは予備にしろって…。 けど、後輩か。 なんか不思議だな」 くしゃくしゃと頭を撫でると、幼い頃のように頬をふくふくさせながらはにかんだ。 「父さん母さんに連絡しろ。 待ってるから」 「あ、そうだった」

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