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第457話

合格者への事前案内が終わっても、校舎内はどこかそわ…っとした空気が満ちている。 大変なのはここからだ。 春休みに離任式や移動になる職員との挨拶やらなんやらで少し慌ただしくなる。 そして、その間に移動がある。 荷物の移動もめんどくさい。 短いそれはすぐに終わり、あっという間に新学期になる。 だからか、職員しかいなき校内全体の空気が少し違う。 先程まで説明をうけていた中学生の落とし物か髪の毛を括るゴムが落ちていたのを職員室へと届け、自席に戻り雑務をこなす。 少し歩いたら気分が紛れた。 早く終わらせ、早く帰宅したい。 そんな折り、ふと脇に置いてあるスマホがメッセージを受け取った。 通知には恋人からであること、そして弟の受験結果が記されていた。 姿勢はそのままスワイプする。 『合格しました』 三条からのメッセージに思わず笑みが溢れた。 『おめでとうございます』 当事者にはプレッシャーだろうが、周りの友人や家族はなにもしてやれずもどかしい思いをしながら待つしか出来ない。 それが漸く喜びへとかわる瞬間。 A組の時に体験したそれを、三条は今噛み締めているのだろう。 『ありがとうございます。 安心しました』 すぐに返ってきたメッセージに続いてスタンプが送られてきた。 可愛らしいそれに今日の晩飯を付き合ってくれと返し、さっさと仕事をを片付ける。 定時に帰宅し、三条と話ながら飯を食う。 そう決めたのだから。 飯を食って、ビールも飲もう。 素晴らしい日を更に鮮やかに装飾するなら飲食物が手っ取り早い。

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