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第459話
キューッとビールを煽ると、画面の向こうでも缶を傾けていた。
ほんと、よく懐いてくれたよな
6年前の今頃のことを考えてしまう。
まだ恋人ではない三条が入学予定者であった時が確かに存在したんだ。
どんな気持ちで合格者発祥の掲示物を見たのか。
その気持ちを誰と分かち合ったのか。
中学校の制服に身を纏い校舎を歩いたのか。
弟に恋人の姿を重ねてしまう。
まだ幼い子があの学校へと入学を果たし、惹かれたのは昨日のことのようにはっきりと思い出せる。
最初は受け持ちのクラスの名簿をもらった時。
とても雄大な名前だと思った。
“遥”か“登”る。
どこまでも高く青い空のような名前だと。
そして、教室で出会った。
一目見た瞬間から目が離せなくなり、それが執着や固執へとカタチをかえた。
いや、今だってそうなのかも知れない。
その名がとてもよく似合う子に、酷いことをして沢山泣かせた。
沢山頑張り、希望校へと合格を果たして半年ほどのことだ。
すべてを塗り潰したはずなのに。
『正宗さん、新発売のこのお菓子美味しいですよっ』
非道な奴を“正宗さん”と呼び、屈託のない無垢な笑顔を向けてくれている。
そして、未来の約束をした。
奇跡でしかない。
「美味そうだな」
『正宗さん、絶対に好きな味です。
今度一緒に食べましょう』
奇跡だけど、確かな現実だ。
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