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第462話

日本人は間を読むことが出来る。 書かないことの美しさ、想像をする儚さ。 すべてを言葉にしなくとも、相手の気持ちを読み取れる。 大切なのは言葉だけではない。 誇らしいものだ。 「正宗さんっ」 この正宗さん、嬉しい気持ちを共有したい時のもの。 「正宗さん」 これは愛おしい気持ちがうんと込められている。 「ま…さ、さっ」 これは言わずもがなで、愛してるだ。 日本人が“空気を読む”というのはこれに通じているのだろう。 「正宗さん、ありがとうございます。 大切に食べます!」 キラキラ輝くこの意味は、大好き、嬉しい、ありがとう、大好き!大好き!だ。 尻尾までぶんぶん振っている。 「どういたしまして」 「あの、俺からもホワイトデーのお菓子です。 受け取ってくださいますか…?」 「勿論。 すっげぇ嬉しい。 ありがとうございます」 顔を見たら分かるが、この時間だとそれが役立つ。 いつもの飴玉。 だけど、いつもはじめてもらうように喜んでくれる。 キラキラするのはこの笑顔だ。 お互い袋の中を見て顔を上げる。 「これ、大好きです! ありがとうございます!」 「お、遥登のも美味そうだな。 食おうぜ」 「飴も食べましょう」 「うん。 2人で食おうか」 「沢山食べられますね」 「そうだな」 指の背で髪を撫でると嬉しそうな目が自分を見詰めた。 これは、特別な顔。

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