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第463話

行儀悪くバームクーヘンを千切りながら食べる。 キャラメル味で甘いが、上に振り掛けられた塩がその味を締めてくれており、くどくない。 途中で買ったお茶と共に甘い時間を過ごす。 隣で同じものを食べる愛おしい子と一緒に食べると極上だ。 ゆっくりと味わう甘味に、もう1つ欲しいものを強請る。 「遥登も食いてぇなぁ」 じわっと耳や頬が赤くなり、こちらを見た。 その動作1つひとつが可愛い。 ゴクンっとよく噛みもせずお菓子を飲み込ませてしまったのは申し訳ない。 「今日…、ですか…」 「落ち着いたら。 これから新入生受け入れの準備とか職員の移動もあるからちょっと慌ただしくなる。 だから、それが落ち着いたら」 「…はい」 お菓子を食べていた手を伸ばしてきたと思ったら、小指が絡めとられた。 「俺が、頑張ります、から」 「マジ?」 「…ん、」 「期待してる」 囚われた小指を軽く揺すると三条からも揺らした。 本当に愛おしくて困る。 「じゃあ、今はこれで元気分けてもらうな」 ぎゅっと細い身体を抱き締め首筋に顔を埋めた。 やっぱり三条から分けてもらう元気が1番心も満たしてくれる。 「大好きです」 「俺も録音してぇなぁ」 「お安いご用です」 クスクス笑う声に鼓膜まで喜んでいる。

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