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第470話

「どう?」 「良いじゃん。 格好良い」 「へへっ。 ちょっとでかいけど、兄ちゃんみたいに伸びたら良いんだしな」 真新しい制服に袖を通した優登は、ほんの数週間前よりグッと大人びて見えた。 パッと見、ほつれや破れ等の異常もない。 安心だ。 「写真撮って良い?」 「兄ちゃんと一緒なら」 「ばあちゃん達に送るんだよ」 「良いじゃん。 兄ちゃんも一緒で。 ばあちゃんもじいちゃんも喜ぶって」 隣に並んだ弟がスマホを掲げ、兄弟を切り取る。 こういう行動の素早さは若いんだ。 更にスイスイと画面をなぞり、写真を共有してくれた。 「綾登もいたら良いのにな」 「帰ってくるまで着てたら良いだろ。 見せびらかせよ」 「えー、ゆーとしゅごーいって言うな。 で、あーともいくーって」 「分かる」 楽しい時を制限させられ、我慢も沢山した優登。 高校では目一杯青春をして欲しい。 沢山遊んで、沢山勉強をして、沢山ふざけて、沢山出会って。 そして、その中で大切な人と出会えたらとても素敵だ。 恋人だけではなく、友人もそう。 恩師だって良い。 その名前の通り優しく育った格好良い弟の後ろ姿を見ながら、三条は兄の顔をしていた。

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