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第471話

4月1日。 新学期だ。 三条は大学4年生。 優登は高校1年生。 綾登は年少組になる。 三条にとっては、進路が決まる大切な1年のはじまりだ。 そんな日も、2人でデートをする。 「大学4年だな。 おめでとう」 「ありがとうございます。 今年は試験もありますし、頑張ります!」 「ん。 待ってる」 “待ってる”。 その意味が分かる三条はしっかりと頷いた。 外灯の下を小指を繋いで歩きながら、ふらふらと川を眺めつつのデート。 何度も歩いた道だ。 だけど、何度歩いても三条とならキラキラと輝いて見える。 花の咲いた蕗の薹を見付けて笑い、梅の甘いにおいに腹が減ると笑う。 そんな日々が大切だ。 この日々がないだけで三条の心は減っていく。 勿論、それだけが目的ではない。 肉眼で見なければ分からないことも多々ある。 顔色や疲労、嬉しさや、悲しみ。 いくら分かりやすい子だとしても、それを隠すのも上手な子だ。 ちゃんと見ていたい。 それに、長岡が単純に会いたいからこうしてデートを重ねる。 お互いが会いたいから会う。 そんな大切なことまで感染症に奪われたくはない。 「?」 長岡は繋いでいた小指をほどいた。 不思議に思った三条が立ち止まると、今度はその手をしっかりと握り直した。 「っ!」 「今日くらい良いだろ」 「はいっ!」 しっかりと絡まる指と指。 恋人繋ぎに三条の頬の筋肉は使い物にならなくなった。

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