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第499話

リュックにハードカバーや文庫本を詰めるとずっしりとした重みを感じる。 1冊でみれば軽い本。 だが、冊数が増えれば、その大元が木であることを思い出す。 「転ぶなよ」 「気を付けます」 読みたかった本を含めしあわせな重みに三条は嬉しそう。 本の趣味が合うというのは幸運だ。 系統が似ていれば、長岡が選択した本は自分の好みであることが多いということ。 その分だけ、好きな本に出会えるんだから。 「参考書も持ってくるから、次はそっちな」 「嬉しいです。 正宗さんのやつ、脇のメモまで参考になるので勉強になります」 4回生になったということは、教員採用試験があるということ。 なんとか教育実習を乗りきったので、試験も無事に乗りきりたいところだ。 倍率なんかを考えると不安に思う時も沢山あるが、まずは勉強。 どんなに沢山勉強したって、きっと不安はかわらない。 なら、ひたすら勉強するだけ。 不安になろうが関係ない。 まずは出来ることをする。 目の前の目標はうんと高いが、その目標に手が届くように沢山の知識を積み重ねていきたい。 どんな些細なことでも。 「過去問題も持ってくるな。 あとなんか見繕ってくる」 「ありがとうございます」 「お礼は、ほら」 長岡は、腕を広げて見せる。 まるで子供にするかのように穏やかな顔で。 三条はそこにポスッと埋まり腕を背中に回した。 「可愛いなぁ」 「お礼ですから」 なんて言いながらも、三条の尻尾がブンブンっと揺れていた。

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