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第502話

「まっくらね」 「真っ暗な方が蝋燭がキラキラして可愛いでしょ」 父親がライターで蝋燭に明かりをつけると誕生の歌を歌う。 保育園でも教えてもらったのか、舌足らずな肥も英語を喋っている。 「誕生日おめでとう」 「おめでとう」 「おめでとな」 「綾登、おめでとう」 「ありあと!」 フーッと息を吹くが上手く蝋燭の火は消えてくれない。 「もっかい」 フーッと今度はもう少し強く吹き付けた。 誕生日が素敵な日なんて、当たり前のことのように知っている。 だけど、こうして幼い弟の成長をみているとその理由がよく分かるようだ。 大切な理由が分かる。 蝋燭が消えると、三条は部屋の電気を点けた。 目が慣れるまでの一瞬、多くの光が目に入りクラっとしたが見ていたい。 嬉しそうな顔をしてケーキを指さす三男。 そんな弟を構う次男 更にその2人を見てるいる両親。 大切な家族。 長岡も守ってくれている、俺の家族だ。 「はーう、パシャしよ」 「写真? 良いよ。 撮ろうか」 もう家族写真なんて歳ではないけれど、思い出が増えていくのが嬉しい。

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