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第504話
ほうれん草の芽を見付け喜んだり、ホースで野菜や花に水やりをしたり、弟は忙しい毎日を過ごしていた。
子供は子供なりに忙しい。
そんな弟を見ながら、三条は試験勉強をする。
教員採用試験の為の参考書や、資料になる本は長岡からドッサリと借りたのでいくらでも勉強が出来る。
「ほうれん草なのに喜んでる。
分かってんのかな」
「カップケーキにして欲しいんだろ。
優登の作るの美味しいし」
「……へぇ。
兄ちゃん、なんか飲む?」
「じゃあ、麦茶くれるか」
「うぃー」
照れている弟が可愛い。
照れ隠しに台所へと行ってしまった。
暫く部屋で勉強していたのだが、長岡が『あんまりお兄ちゃんを一人占めしてんのも弟達に悪いし、本屋に行くから顔見せてこい』と本屋に行ってしまった。
時々聞こえてくる末弟の声に口端を上げていたのを知っているので、その言葉に甘えさせてもらった。
「優登、なんかお菓子もあったら嬉しい」
「うぃー」
弟にも甘えながら午後のゆっくりとした時間を過ごしていると、スマホがメッセージを受け取ったと知らせた。
『本屋のついでに、久し振りに実家に帰ってきた』
見覚えのある服に抱かれた黒猫。
素人目でも分かるほど甘えた顔をしている。
『蓬も柏も元気だ』
足元で寝転び通行の邪魔をするおじいちゃん猫。
可愛らしい家族とそんな家族を見て穏やかな顔をしている恋人が想像出来た。
長岡も家族と一緒なら良かった。
だって、いつも一人占めさせてもらっているから。
これでまた充分に一人占めが出来る。
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