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第505話
実家へ帰ってくるとすぐに蓬が顔を出した。
にゃぁ、と短く鳴いて脚に身体を擦り付けてくる。
足音で分かるのか、それとも玄関の開け方なのか、蓬も柏も耳が良い。
実家に居た頃から今でも帰ってくるといつも出迎えてくれる。
廊下でそんな蓬の写真を撮っていると足に柏が乗ってきた。
ごろんと寝転び、アピールをする。
こちらも大変可愛い。
「ただいま。
飯買ってきたぞ」
廊下に座り込み、2匹の頭を撫でてやる。
手は疲れるがこの可愛さが見られるなら安いものだ。
そもそも2匹は自分が連れてきた子達だ。
可愛くない訳がない。
暫くそうしていると、リビングのドアが開いた。
「うわっ!
正宗、帰ってたの…。
もー、脅かさないでよ…」
「別に脅かしてねぇだろ。
柏達の飯と猫砂買ってきた」
「ありがとね。
ご飯食べてく?
炒飯ならすぐに出来るけど」
「なんか適当に冷蔵庫漁るから良いよ」
「オムライスが良い?」
「いくつだと思ってんだよ…」
手の動きを緩めると、おでこをぶつけ催促される。
またこしょこしょと手を動かした。
「良いじゃない。
明日はこどもの日なんだから。
正宗は母さんの子でしょ」
「…じゃあ、食う」
たまには、素直な恋人を見習ってみるか。
あの子のように注がれた愛情をきちんと受け止め、返せるようになりたい。
なら、そう行動するだけだ。
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