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第506話

夜になり、帰宅した長岡と通話をしていると部屋のドアがノックされた。 時間的に優登だろう。 部屋を訪れた理由も分かる。 だって、時刻は5月5日0時だ。 「弟が来たみたいです。 少し良いですか」 イヤホンを片耳から抜くと返事をした。 「開けて良いよ」 「兄ちゃん、誕生日おめでとう! プレゼントは起きたら渡すな! 楽しみにしとけよ!」 「ありがとう。 プレゼント期待してる。 ロールケーキか?」 「秘密。 じゃあな。 通話中にごめん」 すぐに自室へと帰っていく弟に、通話相手は小さく笑った。 『夜なのに元気だな』 「夜の方が楽しいですからね。 ラーメンも夜中に食べると一層美味しいですし」 『ラーメンは違いねぇな。 で、風呂入るのか』 「はい。 でも、その前に散歩です」 『へぇ? “散歩”ね』 そう。 散歩。 だって、通話口の向こうで車のドアを閉める音が聞こえた。 つまりはそういうことだ。 「きっと良いことがあります」 『そりゃ楽しみだな』 「誕生日ですから」

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