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第507話

「遥登」 神社の前で待っていてくれる長身の影。 思わず顔が綻ぶ。 「正宗さん…っ」 駆けていくと、相手の顔もそうであることが分かった。 マスクをしていたって分かる。 だって、自分だけが見られる特別な顔。 大好きな顔だ。 見間違うはずがない。 「誕生日おめでとう」 「ありがとうございます。 へへっ、会えて嬉しいです」 「祝日生まれの特権だな。 じゃ、“散歩”すっか」 「デートです」 「デートで良いのか?」 「デートが良いです」 いつもなら小指を絡めるところを、手をとられた。 隣を見上げれば、綺麗な笑みと穏やかな目。 まるで愛してると伝えるかのような表情だ。 この顔が好き。 長岡のしあわせそうな顔がなによりも好きだ。 「誕生日なんだから手な」 キラキラ、ピカピカする。 世界中が輝いて見える。 今日が誕生日だからじゃない。 隣に世界で1番大好きな人がいてくれるから。 「大好きです」 「俺は愛してるよ」 いつもと同じ駐車場までのデート。 だけど、とっても嬉しいデートだ。 ゆっくりと遠回りをしながら夜に紛れる。

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