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第509話
「マスク濡れるぞ。
ズラしとけ」
「は…い…」
「泣き止んだらケーキ食おうな」
「はい…」
背中を擦る大きな手。
抱き締めてくれる大きな身体。
俺の大好きな人。
なんて大きな誕生日プレゼントだ。
「今年はプレゼント一緒に選ぼうと思ったんだけど、今度にするか」
「……正宗さんとのキス、嬉しいです…」
「キスは誕生日プレゼントにはカウントしねぇの。
じゃねぇと、年に1回しか出来なかったねぇぞ。
だから、一緒にプレゼント選ぼうな」
「ありがとう、ございます」
「どういたしまして」
大好きだ。
愛おしい。
誰がなんと言おうと、俺は“長岡正宗”を愛している。
強く、強く、そう思う。
背後に回した手に力を入れると、背中に回っていた大きな手が後頭部を撫でた。
気持ちの良い手。
いつからこの手がこんなにも安心するものになったんだろう。
長い時間をかけて家族という認識になり、そしてこんなに大切な日とになった。
「もっかい、良いですか…」
「覚えちまったな」
悪戯っぽい顔がまっすぐに自分を見詰めた。
今度は額。
手を挟んではいるがやっぱり嬉しい。
「くち…」
「特別だから良いんだろ」
「……狡いです」
「大人は狡いんだよ」
いつもは大人ぶらないのに。
対等でいてくれる。
好きになったのは、そういうことが自然に出来る人だ。
「誕生日なのに…」
「これからも愛されてろ」
ちゅ
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