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第511話

「プレゼントなんにしような」 「正宗さんの時間が良いです」 「そういうのは狡いぞ。 んなの都合付ける。 無理でも時間つくる。 そうじゃなくて、形に残らなくてもこうなんかあんだろ」 う゛ーん、と考えてみるが、長岡と一緒にいたいのがなによりの願いだ。 こうして、ケーキを買ってきてくれて、自分の為に時間を使ってくれる。 それが嬉しい。 だから、これ以上なにかが欲しいとは思わないのだが、長岡が言うことも理解は出来る。 自分が長岡の誕生日に思うことだからだ。 悩んでいると、フォークをとられた。 そして、それでケーキを掬い口元へと運んでくる。 「口開けな」 「あ、いただきます」 この甘やかしだって恥ずかしさもあるが嬉しい。 もぐもぐと頬袋を膨らませながら、欲しいものを考える。 「あ、じゃあ、有給使うか?」 「駄目ですっ。 それは、流石に……。 考えますから」 子供が母の日や父の日に贈るような、なんでもする券みたいな物の方が自由に使えて嬉しい気がしてきた。 寧ろ、良い。 最強カードだ。 「あの…、なんでもする券みたいなのは…」 「駄目じゃねぇけど、有給使うぞ」 「……もう少し考えさせてください」 カタチに残らなくても良い。 少し遠出をしたり。 遠出じゃなくたってデートが楽しい。 欲しい物を考えても、やっぱり長岡と過ごすことが中心だ。 隣にいて欲しい。 最上級の我が儘。 自分がどれほど長岡のことが好きなのか再認識する。 「正宗さんが欲しいです」 「俺?」 「はい。 あ、正宗さんのお古が良いです! 服とか」 「プレゼントがお古って…」 「正宗さんのにおいが染み付いたのだと嬉しいです」 「ほんと欲がねぇな…」 なんてことを言うが、頭を撫でるその顔はどこか嬉しそうだ。

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