514 / 641

第514話

部屋中に充ちる甘いにおい。 机の上には飲み物とお菓子。 ゲーム機まで用意されている。 そして、床に座る足の上には末弟。 今日は甘えて座っている訳ではなく、兄が台所に行かないように次男に頼まれ見張りでいた。 「ちゃーちゃ、いる?」 「まだあるから大丈夫だよ。 ありがとう」 背後が気になるが、動けば綾登が「だめよ」と言う。 こういう時の弟達の結束は強い。 少しだけ羨ましくなり、綾登をぎゅーっと抱き締めた。 キャッキャッと笑うふくふくの頬も揉む。 どこもモチモチだ。 「スベスベだなぁ」 「んへへへっ」 「出来た! 兄ちゃん、良いよ」 「いーよ!」 「見に行こっか」 綾登と一緒に台所へ向かうと更に甘いにおいが濃くなった。 甘いバターとクリームのにおいに、甘酸っぱいにおい。 大きなお皿の上には真っ白なロールケーキが鎮座している。 白いロールケーキの上には白い生クリームと白苺が飾られ、豊かな白が鮮やかだ。 「すげっ! え、すげぇな!」 写真を撮る手が止まらない。 「ふふんっ」 「たべる?」 「ご飯食べたらな。 綾登の時も、部屋暗くしたろ。 空が暗くなってから」 「たおしみ!」 「楽しみだな。 優登、ありがとな。 すっげぇ嬉しい」 どんどん上手になるお菓子作り。 人を笑顔に出来る優登のすごさに感動だ。

ともだちにシェアしよう!