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第519話

サラサラの髪を梳きながら頭を撫でる。 丸くてカタチの良い頭だ。 首は細っこいが、しっかりと頭を支えている。 見えるすべてが、触れるすべてが恋人だ。 「誕生日様々です」 「今年は踏ん張る年だからな。 沢山甘やかすから踏ん張ってくれ」 「はい。 早く、追い付きたいです」 ぎゅぅっと自分を抱き締める腕に力が入る。 気負わせてしまっただろうか。 「感染症なんて足枷にもならないって思いたいです。 悪いことは全部感染症で、頑張りは俺です」 本当に強い子だ。 強くあろうとする姿が眩しい。 そのことで、守れていないと思い知ったこともあった。 別に守れていたなんて思い上がっていた訳ではなかった。 ただ、同時にそれが最善だと疑うこともしなかった。 けれど、現実はそうではなくて、三条も守ってくれていたからあの日々があったんだ。 言葉通り、自分を犠牲にして。 あの傷や痕を一生忘れない。 それすら含めて三条を丸ごと愛している。 生半可な木持で指輪を渡した訳ではない。 本当に数ヶ月分の給料をコツコツ貯めて購入したものだ。 三条には秘密だけどな。 今は我慢ばかりさせてしまっているが、もう少ししたらきっと世界は良い方向へとかわるはず。 三条が学生ではなくなったら。 きっと。 「沢山勉強したいです。 教えてください」 「ん。 任せろ」 「俺が追い付けたら、沢山好きって…言って欲しいです…」 じわっと赤くなる耳に、気持ちが溢れる。 「愛してるよ、遥登」 「…っ」 「かわい」 「22の男に可愛いって…」 「じゃあ、世界で1番愛してるよ」 「…っ」 額を押し付けてくる三条の喉から変な音がして、また笑った。

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