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第521話

離れがたい。 離しがたい。 腕の中のあたたかな体温に、そんな我が儘を思ってしまう。 明日も勉強がある。 早く帰して寝かせた方が良いのは明白だ。 だけど、もう少し もう少しだけ。 キュルルル… 「……本当に、すみません…」 そんな気持ちを立ち切ったのは三条の腹。 「沢山食べたんですけど…。 …折角の雰囲気が…」 いや、らしくて良い。 「なんかホットスナック買いに行くか」 「大丈夫です。 お茶飲めば落ち着くと思いますし」 「食わねぇ?」 「……だって」 「遥登の誕生日なのに?」 「……食べます」 「決まり。 だけど、もう少しだけ」 体温を分け合う。 それだけでも愛おしい。 「遥登はあったけぇなぁ」 「寒いですか?」 「寒くねぇけど、あっためろ」 笑顔で溢れた誕生日を過ごせたのなら、なによりだ。

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