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第523話

教授の都合で暇になってしまった夕方の時間。 散歩を兼ねて綾登の通う保育園へと向かう。 本当は母親が迎えに行く日だが、交換だ。 大きく遠回りをして、郵便局に寄ったりしながら、自分も通った可愛らしいサイズの保育園を訪れた。 「こんにちは。 三条綾登のお迎えです」 「あれ。 お兄さん、こんにちは。 綾登くーん、お兄さんがお迎えに来たよ」 「はう? あっ! はぅーっ」 とたたたっと小さな足音が飛び込んできた。 すごく可愛い。 ぎゅっと脚にしがみつく頭を撫でる。 「母さんと交換して、今日は俺が迎えに来たよ。 お片付けして、お友達と先生に挨拶しておいで」 「あーいっ」 ご機嫌な背中を見送りって待っていると、綾登の担任の先生がやって来た。 「今日はお母さんがお迎えだと思ってました。」 「その予定だったんですけど、午後から暇になっちゃいまして散歩兼ねて来ました。 なんだから咳が止まらないみたいで、午後の授業が休みになってしまって。 学部や授業によっては対面授業もしてますし、人の出入りが増えたので一応ってことで」 「あぁ、なるほど。 学校の先生も大変ですよね。 オンラインならオンラインの方が楽なのに、対面もってなると用意も増えちゃいますし」 「先生も大変ですよね。 いつもありがとうございます」 「いやいや、僕は楽しいですよ。 みんな良い子だし、身体動かすのも好きですし」 それに…、と言葉を続ける。 「やっぱり子供が楽しそうにしてると嬉しいですから。 この子達が笑えるようにしたいって自然と思えるんですよ」 夢を叶えた人の言葉は重みがある。

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