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第528話

「どれが欲しい」 クローゼットを全開にし、ベッドには洗濯済みの物がきちんと畳まれている。 誕生日プレゼントと称して長岡のお古の服を貰いに来たのだが、それも選んで良いと言う。 「本当に良いんですか…?」 「あぁ。 別に構わねぇよ。 冬服でも夏服でも。 俺の服着てる遥登、最高じゃねぇか。 写真くれたら更に嬉しい」 どれもシンプルなものだが、長岡に似合った物だ。 丈もそう。 流石に背が伸びたとはいってもこの脚の長さなら裾を引き摺りそう。 服が良いか。 古そうなワイシャツを手する。 しっかりとにおいや汗が染み込んでいそうだ。 「これが良いです」 「……これもな。 それから、これもやる。 これは普段着れるだろ。 あと、これ」 新しそうな服をポイポイと手渡され、三条は慌てた。 「こんなには駄目です…っ、 正宗さんっ」 長岡だって衣装持ちな方ではない。 なのに、腕の中には沢山の布が詰まれている。 「俺の服着てる遥登見てぇんだよ。 俺の見てる所でも、見てねぇ所でも」 すごい独占欲だ。 だけど、嬉しい。 すっかり毒された三条は頬をしあわせそうに膨らませた。 「1回着てみろ」 「え、はい」

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