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第538話

長岡はすっかり眠ってしまった真夜中。 三条は、昼寝をしたせいか覚醒してしまった。 最初こそ、もう一度眠りにつこうと目を閉じたのだが、いくら待っても心地良い睡魔はやってこない。 昼間、長岡に抱かれ眠ったのが余程身体にとっても、心にとっても、回復になったらしい。 それならだ。 三条は繋げている機械が音を拾わないようにそっとベッドを抜け出し、机へと向かった。 そして、リュックの中から長岡から借りた過去問を取り出しそれを読みはじめる。 こんな時間にはじめることではない。 だけど、こんな時間でも勉強をしたい。 憧れている人の隣に立ってみたいから。 試験者の多くは再試験者が多い。 新卒での1発合格はぐっと狭くなる。 それをやって退けた人。 古典から離れられなかった、が理由でこなした人が目標なんだ。 碌に実習も出来なかった世代だ。 授業はオンラインばかりだった。 実力不足。 そんな言葉は、実力で黙らせたい。 どこか恋人に似てきた思想。 足掻く。 今 、出来ることをやるだけだ。 長岡からもらった服を着、窓の外が白みはじめるまで勉強をしていた。

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