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第539話
窓から吹き込む風が気持ち良い。
オンラインで授業を受けながら、不意に意識が逸れた。
長岡のにおいがするからだ。
においが薄くなってしまうのは勿体ないが、いつでもにおいをつけてもらえらる関係だ。
濃い内に着てしまうのも贅沢で良いと、もらった服を着ているからだ。
ふわふわと良いにおいがして、ご機嫌になってしまう。
もうすぐ試験でピリピリしてもいい頃だが、三条には縁のない話。
多少なりともストレスは感じても、それがピリピリとしたカタチで表面に出ることはない。
いつもと同じ、ふにゃっとした人の良さそうな顔をしている。
長岡曰く、三条の長所。
自分のペースを大切に出来るのは利点だ。
誰かに犯されることなく、淡々と日々を過ごせる。
それは、やろうと思っても出来ない人だっているのだから。
授業を聞きながら、傍らの参考書をパラパラと捲る。
その隅に書かれる恋人の文字を見付けては、頑張ろうと励まされていた。
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