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第540話

「たあいまーっ」 勉強の休憩に飲み物を注いでいると、保育園から帰ってきた綾登がトタトタと走ってやって来た。 後ろから母親も顔を出す。 「おかえり」 「はう、あそべる?」 「遊べるよ」 試験勉強はいくらしても足りないが、授業は終わった。 少し気分転換も必要だ。 しゃがんで遊ぼうかと言うと、綾登は嬉しそうに頬を赤くした。 「汗すげぇな」 「あっついもん」 「暑いもんな。 ほら、手ぇ洗って、ついでに顔も洗いな」 「だっこね」 「はいはい」 小さな身体を抱き上げれば、あわあわぁと手を洗いはじめた。 小さい手が器用に動く。 手のひら、甲、指の股までしっかりと。 そして、泡を流すと、濡れた手で顔を触った。 「遥登、ありがとう」 「良いよ。 俺も気分転換になるから」 「無理な時はちゃんと言ってね。 綾登には大切なテストがあるって話してあるから。 ね、綾登」 「うんっ」 まったくなにか分かっていない顔で頷くので、タオルで拭った。 もにもにと肉が揺れるが可愛い。 「はう、せんせのてすと」 「うん。 先生になりたいからテストするの。 だから、遥登が勉強したいって言ったらなんて言うんだっけ?」 「がんがえ」 「綾登、ありがとうな」 「どうたまま!」

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