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第541話

「ここの考え方なんですけど…」 長岡への質問責めが止まらない。 あれも知りたい。 これも知りたい、 ネットで調べればすぐに答えは得られる。 それでも、長岡の生きた言葉で知りたい。 長岡は、そんな我が儘に笑顔で付き合ってくれる。 『その考え方で大丈夫だ。 ちゃんと理解出来るよ』 そんな時間を過ごしていると、傍らのスマホがメッセージを知らせた。 送信者は向かいの部屋の弟。 なにかと思えば、『廊下に夜食置いた』と簡単なものだった。 『どうした?』 「弟が、夜食持ってきてくれたみたいです。 すみません。 ちょっと、見てきます」 『あぁ、行ってこい』 穏やかな顔をしてくれる恋人に断りをいれ、廊下へと顔を出す。 すると、弟が読んでいる週刊誌で廊下より高くした場所に、おにぎりと個包装のお菓子が置かれていた。 思わず口元が緩んでしまった。 そのまま向かいの部屋の扉をノックする。 「優登、ありがとう」 「俺が腹減ったから、ついで。 でも、あんま無理すんなよ」 「うん。 気を付ける」 「兄ちゃんの気を付けるは当てになんねぇんだよなぁ」 「本当に気を付ける。 年に1回しかない試験だからな」 そうしてくれよ、と軽口を叩くが、本音だろう。 受験を経験した優登も、その緊張や努力の重さを知っている。 経験した重みのある言葉だ。 こんなところまで大きくなった。 「本当にありがとうな。 美味しく食べるから」 ひらひらと手を振ると、同じように返された。 そして、おにぎりとお菓子を持って部屋へと戻る。

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