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第542話

「おにぎりか? 美味そうだな」 弟からの差し入れは、本当に美味そうだな。 沢山の気持ちが込められたそれ。 それを三条は嬉しそうな顔で見ている。 三条と弟は仲が良い。 お互いがお互いを思いあっていて、大好きだという気持ちをきちんと伝えあっている。 だからこそ、反抗期でも三条には甘えているんだ。 そういう三条らしいところが、弟にも受け継がれている。 それにしても、あの小学生だった弟が、今やその学校に通っているのだから時の流れは早い。 似た顔で同じ制服を着ている。 恋人と出会った頃を思い出す。 『先生…っ』 『先生じゃなくて?』 『……正宗さん、』 声ももう少し高かった。 『正宗さん?』 不思議そうな顔をした恋人が画面越しにこちらを見ていた。 『どうかしましたか?』 「いや、でっかくなったと思ってた」 『弟ですか?』 「遥登も」 『成長期ですから』 あぁ、そうだな。 確かな成長だ。 「なぁ、俺のこと呼んでくれよ」 『正宗さん?』 「そう」 『正宗さん』 「うん。 遥登に、そう呼ばれんのすげぇ好き」 『正宗さん』 なんて心地良い声だ。

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