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第548話

「美味い」 「だろ。 褒めて良いよ」 焦がした醤油の香りが食欲をそそる炒飯を頬張る。 「優登はすごいな。 天才だ。 で、天才、テストどう?」 「んー、まぁ、範囲的には中3のも入ってるし想像よりは難しくはないかな。 けど、これから難しくなんだろうなって感じはしてる」 思い返せば、高校1年生のはじめのテストの範囲なんて4月、5月、6月中旬までのごく僅かな範囲。 中学3年の内容が範囲内といっても、受験の記憶が濃い内だ。 難しくなかった記憶がある。 けれど、はじめてのテストに緊張したのも本当。 自分の学力がこの学校で通用するのか、その答え合わせのような気さえした。 「でも、楽しいよ。 知らないことを知れるのは楽しい。 それが勉強でもな」 「へぇ。 楽しそうじゃん。 良かったよ」 どうせなら、楽しい方が良い。 馬鹿なことも真面目にやる。 A組の良いところだ。 そんなクラスで楽しい青春を謳歌して欲しい。 既に大人から奪われているのだから、尚更だ。 「それにしても、それ着てるの慣れねぇ」 「似合ってるだろ」 「まぁな。 けど、俺の着てるって思っちゃうんだよなぁ」 部屋のクローゼットにかけてある制服。 それのサイズ違いを着た次男。 まだ見慣れるほどの時間は経っていない。 着られている感もあるサイズなのも相まり、自分の大きなサイズの制服を着ているようにも見える。 だけど、確かにそれは弟の制服だ。 「懐かしい?」 「スーツも、あんまりかわんねぇよ。 けどなぁ、やっぱり私服は良いよ。 涼しい」 「涼しいはあるよな。 下にドライのシャツ着るとかしても暑い。 つぅか、外あっつい」 「だろ」 この時期の体育は嫌だなぁ、なんて話をしながら昼飯を食べ進める。 本当に楽しそうな顔をして学校のことを話す姿に安心する。 そうやって、楽しい学校生活を過ごして欲しい。

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