549 / 638

第549話

昼食を食べ終え、午後からの授業。 リビングはしっかりと冷え、折角なのでここで授業を受けることにした。 ソファを背中に、画面を眺める。 「……」 ……なのだけど。 すごく、視線を感じる。 ゆっくりとそちらへと視線をやると、弟がテスト勉強の手を止めて此方をじっと見詰めていた。 優登は、ささっとノートの端になにかを書き込むと見せてきた。 『難しい?』 『聞いてみる?』 コクリと頷く頭に、イヤホンを片方差し出す。 はじめて聞く大学の授業。 流石の進学校も、まだ大学見学や体験授業はさせてはいない。 本当にはじめての本物だ。 『なんかすげぇ』 『聞いてて良いよ。 片耳なくても支障ないから』 テスト勉強もそっちのけで聞き入る優登と、そのまま画面を眺める。 なんとなく、こんな日も良いなと思った。

ともだちにシェアしよう!