550 / 729
第550話
授業が終ると、隣からイヤホンが返ってきた。
「大学生って大変だな」
「そうか?
人生の夏休みって言われてるぞ」
「それは、その人がそうだっただけ。
兄ちゃんはちゃんとした平日を過ごしてるじゃん」
平日、か。
自宅にばかりいると分からなくなるが、弟の目から見て、そう見えてくれているのなら嬉しい。
荷物を簡単には端に寄せ、少しだけ休憩だ。
末っ子が帰ってくる前には、荷物は部屋に運ばなければ。
「なんか飲む?」
「麦茶ぁ」
「んー」
空になったグラスに氷を詰めると、昼に飲んでいたカルピスの残りを注ぐ。
もう1つには麦茶。
トクトクと注ぐと肩で冷蔵庫を閉めた。
「あ、兄ちゃんばっかり狡い…」
「交換するか?」
「……それも子供扱いでやだ…」
「どっちでも好きな方飲みな。
俺も好きな方飲むから」
「ほんと?」
「本当、本当。
その代わり、おかき食べよ」
いそいそと用意し始めた優登を横目に麦茶を飲んだ。
ともだちにシェアしよう!