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第550話

授業が終ると、隣からイヤホンが返ってきた。 「大学生って大変だな」 「そうか? 人生の夏休みって言われてるぞ」 「それは、その人がそうだっただけ。 兄ちゃんはちゃんとした平日を過ごしてるじゃん」 平日、か。 自宅にばかりいると分からなくなるが、弟の目から見て、そう見えてくれているのなら嬉しい。 荷物を簡単には端に寄せ、少しだけ休憩だ。 末っ子が帰ってくる前には、荷物は部屋に運ばなければ。 「なんか飲む?」 「麦茶ぁ」 「んー」 空になったグラスに氷を詰めると、昼に飲んでいたカルピスの残りを注ぐ。 もう1つには麦茶。 トクトクと注ぐと肩で冷蔵庫を閉めた。 「あ、兄ちゃんばっかり狡い…」 「交換するか?」 「……それも子供扱いでやだ…」 「どっちでも好きな方飲みな。 俺も好きな方飲むから」 「ほんと?」 「本当、本当。 その代わり、おかき食べよ」 いそいそと用意し始めた優登を横目に麦茶を飲んだ。

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