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第551話

随分と日が長くなった。 19時になってまだ明るく、つい寄り道をしてしまう。 書店に寄ると、ストレスを発散するかのように本を手に取っていく。 読みたかった新刊。 授業の資料になりそうな本。 好きな作家の対談が載った雑誌。 それから、ボールペンの替芯も。 大切な恋人の修学旅行のお土産だ。 替芯を利用し、ずっと使っている。 すっかり手に馴染んだ筆記用具だ。 レジを通し、外に出てもうっすらと明るい。 ついでに、晩飯を買って帰ろう。 帰ったら通話を繋げて、また同じ時間を過ごす。 試験まで2週間。 三条を応援することしか出来ないが、応援することが出来る。 どんなことだってやれることがあるのが救いだ。 そうでなければ、自分までソワソワとしてしまう。 三条は、沢山勉強をしている。 その努力が報われた良い。 そうであってくれと願っている。 正しく生きている人は、正しく評価されなければいけない。 それが、“正しさ”だ。 だけど、努力は必ずしも報われるとは限らない。 生きていると報われない努力が多くあり、その数に奥歯を噛み締める時だってある。 人生は残酷だ。 置かれたところに咲くことで、神の采配が正しかったと証明するしかない。 自分がしてきたことが正しかったのか、それともなにか間違いを含んでいたのか、それは咲いてみなければ分からないんだ。 たまたま教師になれた自分。 願って教師になる三条。 今の自分に出来ることは、三条を信じることだけ。 どうか、花が咲きますように。 そう願いながら毎日を過ごしていた。 自宅の方へとハンドルをきりながら、晩飯はなににしようか考えた。

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