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第554話
本を読みながら寝落ちてしまったらしく、夜更けに目を覚ました。
やっべ、本折れてねぇよな
本の心配を第一に眠たい目を開けると、目の前の通話画面の向こうは明るかった。
耳に射しっぱなしのイヤホンからは紙の上をシャーペンが走る音だけが聴こえてくる。
こんな時間まで勉強してんのか
暫く見ていると、ひたすら手を動かながら時々なにかを呟きはじめた。
自分の言葉にし、それを声に出すことで頭に定着させているのだろう。
真っ直ぐな目が、とても綺麗だ。
長岡は本をサイドチェストの上に避難させ、枕に頭を沈めた。
そっと見守るだけ。
今は、それが良いだろう。
起きていると知れば、気を遣わせてしまう。
真面目な優等生の努力。
外からは見えない、踏ん張り。
三条が当たり前だと言ったそれらは、とても格好良い。
実ってくれと願う。
その名前に込められた願い通り、沢山の芽が空を目指してスクスクと伸びている。
花が咲け。
実を結べ。
そして、また沢山の種を溢し発芽しろ。
まだ少し眺めてから目を瞑ろうと、ただ静かに見守っている。
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