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第555話

流石に、1週間前になると緊張が半端なくなってきた。 不安、……なのだろうか。 なんとなく嫌だなと思うものに包まれ、居心地が悪い。 こんな時は恋人に限る……のだが、生憎その恋人はコンビニへと出掛けた。 長岡を見送り、勉強をしていた三条だが、ふと顔をあげた。 正宗さん、早く帰ってこないかな… あの顔が見たい。 そこに気配が欲しい。 落ち着くから。 決して口にはしない我が儘を飲み込み、また頭を下げた。 すると、それとほぼ同時に、傍らのスマホがメッセージを知らせた。 「…っ!」 慌てて窓を開けると、大好きな人が片手をヒラヒラと振っている。 なんで…、コンビニって… だけど、身体は正直だ。 窓を閉めるとすぐに階下へと向かう。 裏口から抜け出ると、綾登のトマトの脇を通って正面の道路へ駆けた。 「正宗さん…っ」 「よ」 「コンビニって…」 「コンビニだよ。 近くのコンビニに行くなんて言ってねぇだろ」 「屁理屈……」 だけど、嬉しい。 「大好きです」 「家の近くだぞ」 「良いんです」 「遥登も行くか? “コンビニ”」 「はいっ」 予想外のデートに顔の筋肉がふにゃふにゃになっていくのが分かった。 現金で良い。 単純で良かった。

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