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第556話

コンビニへと遠回りして歩いていると、ふと長岡の顔が此方を見据えた。 「不安か?」 「顔に…出てますか…?」 「んー…、いつものふにゃふにゃした顔ではねぇな」 「……不安、なんだと思います。 圧倒的に実習経験の少ないこととか、やっぱり…」 「大人達の失敗作」 「え…?」 「俺達ゆとり世代のこと。 けどな、そんなの俺のせいじゃねぇから知らねぇ」 長岡の言葉に、目をパチクリとさせる。 だけど、ゆとり世代という世代の区別が、悪口のように使われるのも知っている。 長岡に対して、世代を気にすることはほぼなかった。 ゆとり世代だ、さとり世代だ、Z世代だ。 そんなの関係なくいられるのは、長岡が教師だからだけではない。 キチンと相手のことを理解し、尊重しているから。 だからこそ、世代や歳の差を感じることさ少なかった。 「事実、俺も途中までは土曜も学校に通ってただけどな。 けど、ゆとりだって言われてきた。 大人は、なんか適当な理由をつけて責めたいんだよ。 優位に立ちてぇの」 「優位…?」 「そう。 その理由に生まれた時を言う。 当人が否定出来ねぇから。 自分達の時はセックスブームだったくせにな」 長岡は、カラッと笑ってみせた。 言い方はアレだが、ベビーブームに長じてセックスに励んだのは事実でもある。 だからってセックスブームは言葉が強すぎはしないか。 「遥登達は、ミレニアムベイビーだぞ。 1000年に1度の逸材だ。 そう考えりゃ良い」 「良いんですか…?」 「あぁ。 俺が言ってんだからな」

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