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第560話

「ご馳走さまでした」 「美味かったな」 「はい。 美味しかったです。 ありがとうございます」 買ったレジ袋に食べ終えたアイスのゴミを纏め、長岡は椅子に深く座り込んだ。 「やっぱり生の遥登と居ると落ち着くな」 「生って…」 国語科教諭の語彙力とは思えないが、生憎今は自分だけの恋人だ。 ふにゃっと笑うと更に言葉が続いた。 「遥登もセックスも、生が1番」 「…っ!! こ、え、おっきいですっ。 人が居たらっ」 「そん時は遥登と逃げる。 ここら辺なら、もう覚えたし」 そういう問題で良いのだろうか。 いくら夜でも、外出する理由はある。 田舎だろうが、娯楽がなかろうが、関係のない理由だって。 でも、前者には同意する。 ……後者も。 通話画面越しでも好きにはかわりない。 けど、こうして触れられる距離はもっと良い。 においが分かる。 体温が分かる。 触れられる。 乱れた髪さえ、この目玉で見ることが出来る。 それは、とてもしあわせだ。 腕に触れ甘えると、手を握られた。 小指じゃない。 手を。 「帰さねぇとな」 「でも…、もう少しだけ…」 「ん。 もう少しだけ居ような」 サワサワと木の葉の揺れる音だけを聞き、2人きりの時間を過ごした。

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