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第568話

今日の三条は、甘えたくて仕方がないらしくとても可愛い。 さっきから犬みたいな顔でこちらをチラチラ見てきては、ふにゃふにゃした顔をし、しまいには背中に抱き付いてきた。 抱き潰したいくらい愛おしい。 頬をくっ付け甘える三条の手を取り、その薬指へとキスをした。 「っ!!」 気配が喜んでいる。 三条が犬なら、ブンッブンッと千切れるくらい元気に尻尾を振っているだろう。 「……あの、……甘えても、良いですか…?」 「ん。 甘やかして良いならな」 「お願いします」 じゃあ、とばかりに正面から抱き締めるといつもより大胆に腕が回ってきた。 余程試験で気を遣っていたのだろう。 今日、そして2次試験の結果で来年の進路が決まる。 一生のことだ。 試験自体は毎年開催されているが、1年に1回のチャンス。 みんな、そのチャンスに手を伸ばすために勉強をしている。 誰もが三条と同じように手を伸ばしているんだ。 それを理解している三条の頑張りは、簡単に言葉にすることは出来ない。 だから、甘やかす。 三条が望むなら、甘いものだけをやる。 髪を梳くように形の良い頭を撫で、時々悪戯に耳の縁も撫でた。 コロコロと鈴のような声で喜ぶからやめられない。 「耳は擽ったいです」 「甘やかして良いんだろ」 「はい。 ……ぁっ」 耳から首筋を指先でなぞると、なんとも良い声が聴こえた。 そして、目下で耳がジワ…ッと赤くなる。 三条を甘やかすのは至極楽しい。

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