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第572話

ご機嫌な長岡の運転で、自宅へと送ってもらう。 申し訳ないという思いと、長岡と一緒に居られて嬉しいと思う気持ちが、鬩ぎ合う。 「デート、楽しいな」 だけど、そんなことお見通しの恋人は綺麗な顔で微笑んだ。 本当の顔だ。 それが嬉しい。 だから、三条も本物を返す。 「俺も、正宗さんと一緒なの楽しいです。 それに嬉しいです」 「可愛いこと言いやがって。 襲うぞ」 「ここでは…」 「じゃあ、青姦すっか? 遥登、好きだろ」 「好きじゃ…っ」 「ねぇの?」 「…………人並み…、です」 クスクスと笑う声も心地が良い。 例え、からかわれていても。 低くて落ち着く声に名前を呼ばれるたびに、胸がきゅっとする。 良い名前だと自画自賛だ。 命名してくれたのは両親だが。 赤色に停車すると、後部座席から手を伸ばして長岡に触れた。 「正宗さんと、だからです…」 「殺し文句だな」 青色へと変わった瞬間、自分の手に大きなものが重なった。 一瞬だけ。 だけど、確かに重なった。 今日は、そんな小さなこと1つでもとても嬉しい。

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