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第573話

「ただいま」 「兄ちゃんっ、おかえりっ」 「おっかえり」 玄関を開けると弟達が駆けてきた。 末っ子はそのまま脚に抱き付く。 裸足のまま土間に降りてしまったので抱き上げると、嬉しそうに笑った。 そういうつもりではないのだが、ニコニコした顔はとても可愛い。 ついでとばかりに抱き締めた。 「試験どうだった?」 「んー、出しきってはきたよ」 「そっか。 綾登とアイス作ったんだ。 食う?」 「食いたい。 けど、先に着替えたい」 綾登と廊下におろし、革靴を脱ぐ。 腰を下ろしてがら空きになった背中に綾登がよじ登る。 じわっと蒸す廊下にあたたかな体温。 アイスがより楽しみになる。 「遥登、おかえり。 綾登はなにしてんだ」 玄関の隣の和室から父親が顔を出した。 「とーと。 おんぶぅ」 「遥登疲れてるから、麦茶の用意してあげたら喜ぶと思うなぁ」 「ほんと?」 「うん。 冷たいの飲みたい」 「まっててね!」 ストッとおりた綾登は、みっちゃん!と母親の元へと戻っていく。 「着替えておいで」 「うん」 「綾登、父さんもお茶飲みたい」 「いーよー」 綾登の背中を追うようにリビングへと歩く父。 隣でうずうずした顔をする弟。 賑やかな家に、帰宅したんだと肩の力を抜いた。

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