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第576話

楽しそうな話に、その姿が思い浮かぶ。 恋人そっくりの小さな弟。 その子が喜ぶ姿は想像だけで可愛らしい。 確かに、弟は可愛い。 だけど、三男を通して、会うことすらなかった幼い頃の恋人を想像している。 「俺も遥登と花火がしてぇな」 素直な感想を言うと、三条は一瞬キョトンとした。 『俺も、正宗さんとしてみたいです』 「じゃあ、誕生日期待しよっかなぁ」 『はいっ! 任せてください!』 「楽しみにしてる」 画面に笑って見ければ、三条は嬉そうに尻尾を振っていた。 可愛いと思う。 愛おしい。 タオルケットにくるまりながら、くふくふ笑うその顔。 世界で1番しあわせそうだ。 ま、実際に1番しあわせなのは俺だけどな。 「でっけぇのやろうぜ」 『楽しそうですね。 でも、打ち上げって河川敷とかで出来ますか?』 「あー、どうだろうな。 なら、海行くか」 太陽の光を反射する海面みたいに輝く目。 自信の誕生日、8月の後半は二次試験も終わっている。 それくらい甘やかしても良いだろう。 「楽しみだな」 『俺も、楽しみです。 試験も頑張れますっ』 「じゃあ、今日は早く寝て、また明日から勉強だな」 『でも…、もう少しだけ』 「もう少しだけな」 そうして今日は今日で甘やかす。

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