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第577話

すっかり足に馴染んだスニーカー。 それを見るたびに、恋人の優しさが頭を撫でる。 クリスマスプレゼントのスニーカーは、今日も自分をしあわせな気持ちにしてくれる。 「ぺかぺかね」 「綺麗になったな」 泥んこになった三男の靴を洗うついでに自分の物も洗った。 清潔さを取り戻した、だけど濡れたスニーカーを日当たりの良い庭に置く。 この太陽なら、すぐに乾くだろう。 「ありがと」 「うん。 どういたしまして。 綾登も、手伝ってくれてありがとう」 「どいたまま!」 勉強の気分転換のつもりだったが、靴も綺麗になりすっきりだ。 こうもすっきりすると、勉強に戻りたくない気持ちも出てくる。 そういう訳にもいかないが。 どんどんと色付くトマト。 すくすく育つほうれん草。 そんな風に成長し、大きくなれた姿を見て欲しい。 家族にも、友達にも、恋人にも。 だから、やる。 「乾くまで勉強しようかな」 「あーと、おえかき」 「お、良いな。 一緒にしようか」 「うんっ!」 「その前に、部屋に入ったらお茶飲もうか」 「ちゃーちゃ、すき」 束の間の休息。

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