582 / 729
第582話
小五月蝿いアラーム音に目を覚ますと、隣から伸びてきた細い指が画面を撫でた。
「わり、マジ寝してた…」
「いえ。
俺はスッキリしましたから」
三条は、いつものようにふにゃっと笑ってみせた。
その顔が愛おしい。
「ほんと寝起き良いな」
頬をグリグリ撫でてやり、愛おしい気持ちを伝える。
愛されることを素直に受け入れる可愛い恋人。
しあわせだ。
この子との夢はみられなかったが、それでもしあわせな気持ちは本当だ。
「正宗さんは眠そうですね」
「んー、少しだけな」
眠いは眠いが、車内が冷えてきたことと三条の清潔なにおいのお陰だろう。
日中の疲れ、という訳ではない。
やはり、恋人の存在は大きい。
ともだちにシェアしよう!