584 / 729
第584話
次男は夏休みはいり、お陰で自宅には人の気配がある。
それがなんだか嬉しい。
気兼ねがない1人も良いが、その相手が弟ならなにも気にすることはない。
不意に自室のドアを叩く音に意識が覚醒した。
「兄ちゃん、昼飯」
「え、もうそんな時間?」
「そんな時間。
俺がいない時の昼が心配なんだけど…」
「前は普通に食ってたよ。
今は、二次あるし…」
「二次試験まで俺がしっっかり食わすから。
おやつも」
ほらほら、と急かされ階下へ行くと素麺とおにぎりが机に並んでいた。
末の弟が好きな混ぜ込みおにぎり。
薬味もどっさり。
簡単だけど、美味しいお昼ごはんだ。
「伸びるから早く食う」
「ありがとう」
「手も洗う」
シンクを指差す弟に、とうとう笑みが溢れた。
「母さんそっくり」
「良いから、食うよ」
「ありがとな」
いそいそと手を洗い、2人でテレビの前の良い席を陣取る。
「いただきます!」
「いただきますっ」
ともだちにシェアしよう!