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第584話

次男は夏休みはいり、お陰で自宅には人の気配がある。 それがなんだか嬉しい。 気兼ねがない1人も良いが、その相手が弟ならなにも気にすることはない。 不意に自室のドアを叩く音に意識が覚醒した。 「兄ちゃん、昼飯」 「え、もうそんな時間?」 「そんな時間。 俺がいない時の昼が心配なんだけど…」 「前は普通に食ってたよ。 今は、二次あるし…」 「二次試験まで俺がしっっかり食わすから。 おやつも」 ほらほら、と急かされ階下へ行くと素麺とおにぎりが机に並んでいた。 末の弟が好きな混ぜ込みおにぎり。 薬味もどっさり。 簡単だけど、美味しいお昼ごはんだ。 「伸びるから早く食う」 「ありがとう」 「手も洗う」 シンクを指差す弟に、とうとう笑みが溢れた。 「母さんそっくり」 「良いから、食うよ」 「ありがとな」 いそいそと手を洗い、2人でテレビの前の良い席を陣取る。 「いただきます!」 「いただきますっ」

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