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第585話
素麺はつるつるっと腹に入るし、さっぱりしていて美味しい。
だけど、それでは腹が膨らまない。
おにぎりもハグッと頬張った。
「んーまいっ」
「豆腐も食う?」
「十分だよ。
1人だとチャーハンとかだし」
「太るよ…」
「太る?」
「……兄ちゃんは、ねぇか」
骨の浮いた手足。
ほっそりとしたシルエット。
両親共に細身なことを差し引いても痩せている。
そんな兄を見て、弟は無駄なことを言ったとばかりの顔をした。
「でも、栄養偏るから野菜も食えよ。
サラダとか汁物とか。
1人の時に倒れたらどうすんだよ」
「善処する」
大きくなった弟を見る三条の顔はすっかり兄のものだ。
家族だけが見られる特別。
「そうだ。
なら、明日はホットプレートで焼きそばにしよう。
目玉焼きものっけて」
「さいっこう!」
「食い終わったら、コンビニまで散歩しようか。
アイス買おう」
「勉強は大丈夫かよ」
「平気平気。
気分転換は大切だろ」
一瞬だけ渋い顔をしたが、兄の顔を見て頷いた。
「約束な」
「ん。
約束な」
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